タラバガニ(鱈場蟹、学名:Paralithodes camtschaticus、英語:red king crab)は、十脚目(エビ目)- 異尾下目(ヤドカリ下目)- タラバガニ科 (en) - タラバガニ属 (en) に分類される甲殻類の一種(1種)。タラバガニ属はタラバガニを含む5種からなる。和名に「カニ」の名があるが、生物学上はヤドカリの仲間である。
食用に珍重され、分布域の沿岸では重要な水産資源の一つとなっている。
日本における主な漁場はオホーツク海で、沖合底引き網や刺し網で漁獲される。かつては蟹工船があり、漁獲したものを海上で缶詰にまで加工していた。かつては、マダラの延縄漁でも混獲されていた。近年、乱獲によって生息数が減少している。
日本では「農林水産省令・『タラバ』蟹類採捕取締規則」という法令により、メスの採捕が禁止されているが、販売についての規制は特になく、ロシアからの輸入品が「子持ちタラバ」として流通している。
塩茹でや蒸し蟹として流通することが多く、そのまま食べる以外にも様々な料理に使われる。日本では半透明の生身を刺身で賞味することもあるが、加熱したものより繊維質が強靭で、旨みも薄い。
タラバガニ属とその下位分類5種(タラバガニとその近縁種)をここに示す。
近縁種として、北日本沿岸に分布するタラバガニ属(学名:genus Paralithodes)として、タラバガニ(学名:P. camtschaticus、英語名:red king crab)のほかに、アブラガニ(学名:P. platypus、英語名:blue king crab)と ハナサキガニ(学名:P. brevipes、英語名:未確認)、北太平洋東岸の P. californiensis (英語名:California king crab)、および、P. rathbuni (英語名:未確認)の4種類がある。前3者はどれもタラバガニ同様重要な食用種となっている。
甲幅は25cmほどで、脚を広げると1mを超える大型甲殻類である。全身が短い棘状突起で覆われている。 食用として流通する際は茹でられて赤橙色になったもの(外骨格に含まれる成分であるアスタキサンチンが加熱によって可視化したもの)が多いが、生体は背中側が暗紫色、腹側が淡黄色をしている。
甲は丸みがあり、やや前方に尖った五角形をしている。両脇が盛りあがり、複眼の間に尖った額角、中央に"H"型の溝がある。なお、心域(H字の中央下の区画)に6つの突起があり、ここで近縁種のアブラガニ(突起が4つだけ)と区別できるが、稀に5本の個体(アブラガニ)も見つかる。
5対の歩脚のうち、第1歩脚は鋏脚で、右の鋏が左より大きい。太くて長い歩脚の中では第3脚が特に長い。第5歩脚は小さくて鰓室(さいしつ)に差し込まれており、鰓(え ら)の掃除をする役割がある。このため外見はほぼ「カニ」であるが、脚が3対しかないように見える。他にもメスの腹部の左右が異なり、腹肢が左側のみにあ ることなど、ヤドカリ類の特徴がある。また、横方向に移動するのが一般的であるカニに対して、タラバガニは縦方向にも移動ができる。顔立ちもよく見ると、 カニ類よりは、ヤドカリ類に近い特徴を備えている事が判る。
日本海、オホーツク海、ベーリング海を含む北太平洋と北極海のアラスカ沿岸、ガラパゴス諸島に分布する。日本の太平洋沿岸では、駿河湾や徳島県沖の水深約850- 約1,100mの海域での捕獲も記録されている。
食性は肉食で多毛類、貝類など様々な小動物を捕食する。一方、天敵としては、人間以外にもオオカミウオやミズダコなどがいる。
なお、ロシア・ノルウェー国境沖のバレンツ海には分布していなかったが、1960年代に旧・ソビエト連邦の科学者がバレンツ海に放流し、繁殖させることに成功した。1980年代後半からノルウェー沖でも生息が観察されるようになり、現在でも分布域を広げつつある。この個体群はロシア・ノルウェー両国で漁業資源として利用されているが、天敵がいない環境で爆発的繁殖を遂げ、外来種として既存の生態系を脅かす存在ともなっている。このため、現地では旧・ソビエト連邦時代の国家元首の名にちなんで Stalin crab (スターリンクラブ)とも別称されている。
4月から6月に浅場で産卵し、成体は水深30- 350m程度の砂泥底に生息するが、若い個体は浅海にも生息する。水温の低い高緯度海域ほど浅い場所に生息する。オス・メス共に孵化後、4年程度で成熟した後に繁殖を行い、15年程度生存する。メス1匹あたりの孵化数は、高齢個体ほど多いと考えられる。種苗稚ガニ生産用に育成した個体では、16,000粒から80,000粒程度を抱卵した。